「サーチ・インサイド・ユアセルフ」感想:マインドフルネス/瞑想で生活が変わるかも

こちらの本を読んで、結構大きなインパクトがあったので、感想をブログにまとめることにしました。

きっかけ

先日参加した Regional Scrum Gathering Tokyo 2023 で聞いた伊藤さん・熊谷さんの講演で本を知ったのがきっかけ。

speakerdeck.com

セッションとしては、社内の噛み合わない議論と対立(空中線)を解決するために「アンガーマネジメント」「NVC (NonViolent Communication)」「マインドフルネス」の3つが役立つ、という話。 まずこれらのうち、自分はマインドフルネスが一番イメージができないものだった。 また、1年半ほど前から会社での役割が Individual Contributor からマネジメントに変化していた。つまり仕事の主な対象がコードから人・チームに移り、問題が長期戦になったり思い通りにならないことが増えた。結果、業務時間の内外問わず心が落ち着かないと感じていた。 その軽減につながるかも、という所からも知ってみたいと思った。 そこで、講演でも紹介されていた本を手に取った。

本の内容ざっとまとめ

  • タイトルの「サーチ・インサイド・ユアセルフ」はGoogle社内のマインドフルネス研修の名前。著者はその創始者の元エンジニア
  • 1章でまずマインドフルネスとは何か、を紹介
  • 以降の章では、マインドフルネスがどんなメリットをもたらすかを、具体的なエクササイズの方法を織り交ぜつつ紹介していく
    • メリットの例:心を鎮められるようにする、集中力を増す、創造性を増す、自信を増す、共感力を増す、愛されるようになる
    • エクササイズは内面に集中する瞑想が中心だが、会話やジャーナリングのように出力を伴うものもある

本を読んでの一番の気づき

ジョン・カバット・ジンはマインドフルネスを、「特別な形、つまり意図的に、今の瞬間に、評価や判断とは無縁の形で注意を払うこと」と定義する。(p.51)

マインドフルネスや瞑想で大事なことは注意力*1、という点が驚きだった。 というのも、自分は瞑想について、なんとなく「心を空っぽにする」「何にも意識がとらわれない無の状態」といった注意力をゼロにするようなイメージを持っていた*2。 しかしここがむしろ真逆で、マインドフルネスでは注意力は無くすのではなく鍛えていくものだった。 ただし判断や評価、反応や行動を廃した純粋な注意を、という理解で合っていると思う。

瞑想は呼吸に注意することで注意力を高める訓練、ということだった。 では注意力を高めてどうするのかというと、注意力を自分の情動や体の状態に向けていく。 これはアンガーマネジメントでも言われることだと思うが、怒りなどの衝動的な心の動きは 刺激 → 情動 → 行動 という順序で起きる。 評価抜きで情動に注意することで、その後の行動(これが怒りやストレス)を抑えていくことができる*3

これは考えてみると納得感がある。 本書でも述べられているが、仮に瞑想で心を空っぽにすることでストレスを軽減できるとしても、再現性がなくて、ストレスイベントが起きる → ストレスを感じる → 瞑想でストレスを減らす → また別のストレスイベントが起こる → ...、ということが繰り返されるだけで本質的に解決しない。 自分の情動から逃げず、理解しうまく付き合っていくことで、同じ出来事があっても動じにくくなる、というのはわかりやすいと思った。

全般、著者がエンジニア出身ということもあって表現がロジカルな傾向があり(著者も自分でそう書いていた)、自分には安心して読める印象だった。

本を読んでから実践してみたこと

マインドフルネスのメリットは複数挙げられていたが、自分としては特に次の2つが得たいと思った。

  1. 意のままに心を鎮める:仕事や生活の時間をより良い状態で過ごしたい
  2. 集中力:特に読書のときなど、気が散りやすいので改善したい

この2つが得られれば、大げさかもしれないが人生にも影響があると思う。 まだ本を読んで1週間しか経っていないが、これまでにやったことと、そこから得られた良い感触についてこの記事を終わりにしたい。

まずは、本に書いてある瞑想の練習をできるだけ毎日やっている。 呼吸に純粋な注意力を向けるよう練習するのだが、やってみると最初は自然な呼吸ができず、自然な呼吸になるよう意識してペースや呼吸量を調整したりしていた。 ここは、目的(注意力を鍛える)を理解した上で続ければ、徐々に上手くできるようになりそうな感覚はあるので、続けていきたい。

また本を読んだ直後に、生活の中、具体的には街中を一人で歩いているとき*4に自分が何を感じているか、にじっと注意してみた。 すると、人とぶつかりそうになったとき、あまり好きでない広告を目にしたとき、冷たい風が吹いてきたときなど、かなり頻繁に、ネガティブな心の反応が生まれていることに気づいた。 ここでちょっと冷静になると、冷たい風が吹いても、すぐ「あー寒い嫌だ」と思わなくても良い、と思えたのが面白かった*5。 冷たいし身体は震えるが、ダウンジャケットも着ているし危険を感じるようなレベルではない、と思い直すと、「嫌だ」という気持ち・反応をやりすごすことができた。 1.については、こういった気持ちのコントロールを色々な場面でできるようにしていくと良いのだと思う。

2.については、自分が読書中にどういうときに気が散るのかに注意し書き出してみた*6。 すると無限にあるわけでもなく、パターンがあった*7。 これを理解することで、気が散ったタイミングに気づきやすくなり、そこから再度本の内容に集中を戻したり、あるいは今は集中できないから休憩しよう、と判断したりしやすくなった。 正直な所、ここ数年、本を読んだが内容がほぼ頭に入っていない、ということが多く、自分の読書スキルに自信をなくし、嫌になりつつあった。 しかし集中できる見通しが見えてきたことで、「集中して読書をする」というチャレンジを込みで、改めて読書を楽しめそうと思えている。 さっそくTrelloを使って積ん読本を読む計画を立ててみると、半年ほどかかることがわかった。 ゲーム感覚で消化していこうと思っている。

まとめ

元エンジニアが書いたマインドフルネス・瞑想の本を読んだら、「注意力が大事」というこれまでと真逆の理解が得られ、

  • ストレスが軽減できるかも
  • 読書を集中力の訓練と捉えて楽しめそう

という感触が得られた、という話でした。

*1:後から見たNetflixの「ヘッドスペースの瞑想ガイド」という番組でも同じことを言っていた

*2:チームのメンバーと雑談しても同じようなイメージを持っていると言っていた。同様の人はそれなりにいるのかもしれない

*3:まだ自分は実践できてはいないが、こう理解はしている

*4:本当は仕事中にそうしたいがまだ余裕がないので

*5:心頭滅却すれば火もまた涼し、という言葉も思い浮かんだ

*6:認知の動きを認知するので「メタ認知」という

*7:書き出したものをそのまま書くと:姿勢、ゲーム、明日の予定、気温、痒さ、飲み物、読書法、「これ読んで意味ある?」という疑念・筋トレ・掃除・本の内容に関係あるエピソード・「この章はあと何ページ?」と思う