RSGT2020初参加レポート

先週、RSGT2020ことRegional Scrum Gathering Tokyo 2020に初めて参加してきました。*1

既に多くの方がレビューなど投稿されていますが、今後のためにも、自分なりの所感などをまとめておきます。

いまの自分の立場/ロール

大阪で、kintoneというBtoBプロダクトの新機能開発をしています。

チームはスクラム開発を取り入れており、自分は開発チームの一員です。 CSM認定を取っていますが、スクラムマスター専任ではなく、スクラムに関して多少詳しい立場から気になったときに可能な範囲でアドバイスをする、といった立場です。

あとチームの特徴としては、マルチサイト(5拠点+在宅)で、常時リモートでモブプログラミングをしています。

RSGT2020・総評

参加してよかった!

たくさんのインプットや勇気づけをもらえました。特に「今年どんな活動をしていこうかな?」とぼんやり考えていたのが、講演や対話を通してより明確化できました*2

一方、仕事でスクラムをやっていく上で、自身の現状と今後のロールについて再考する機会ともなりました。一言で言うと、「なんか中途半端だけどどうしよう?」という漠然とした危機感が沸いています。

いまの自分のロールは開発チームの一員、スクラムマスターではない。リソースも開発チームとしてほぼフルコミットしている。アジャイル/スクラムに興味はあるし、チームの改善などを主体的に考えているつもりではあるが、リソースは明らかに割けていないので出来ていないことも多い*3アジャイルコミュニティにもどっぷり浸かれてなくてもったいない感じというか。ここはまだ結論出ていないので、継続して考えていく。

また、スクラム/アジャイルのマインドを改めてアップデートできました。セッションや会話を通じて、「こういう時はこうすれば良いんだよな」といった考えの確信が強まった感じ。

セッション別の所感など

Day 1

Keynote: The Ten Bulls of the Scrum Patterns / James Coplien

Coplien (Cope) さんは、自分が受けた認定スクラムマスター研修の講師で、親近感がありました。

内容は、十牛図 (The Ten Bulls) という、禅宗の教えを広めるためのポンチ絵になぞらえて、スクラムの習得の道を説くというもの(最近出版されたA Scrum Bookという、スクラムのパタン・ランゲージ本の冒頭と同じ)。

いわゆる「守破離」を別の切り口で表現したように感じた。 スクラム(=牛)を習得しようと、まずはその姿(=スクラムガイドにあるルール、カタ)を追い求めるが、最終的にはチームの全体性 (Wholeness)、自分たちがどうあるべきか、といった無名の質 (Nameless Quality) に従う自然な営みになっていく。結局「スクラムとはこうやるものだよ」という具体的な姿かたちは無い、という話。

学びとしては、「スクラムの形式にとらわれてはいけない。自分がどうあるべきかを常に考え、それに従い続けることが重要」ということ。これはスクラムパターンの一つ The Spirit of the Game と同様だと思う。 よく考えてみれば当たり前のことなのですが、Copeさんが言うとなぜか印象に残るのが面白い。 改めて意識しようと思いました。

あとは講演を聴きながら、「自分やチームはいま、スクラム習得の過程のどのへんにあるだろうか?」と考えていました。 そういえば最近、「スクラムだからどうこう」という話をあまりしていないな、とは思う。でも、チームの全体性や無名の質みたいな悟り(?)に到達できているかといえば自信はない。

これはスクラムパターンを参照して、自分のチームの現状を確認する良いタイミングでは、と思ってA Scrum Bookを購入しまいました。いやはや思うツボですね。

コーチズクリニック(及部さん @TAKAKING22)

1on1でアジャイルコーチに相談できるとても贅沢なコーナー。

スクラムで重要とされるチームの全体性と、個人の評価の兼ね合いをどうつければ良いか?」という問いを、及部さん (@TAKAKING22) にぶつけさせてもらいました。 最近読んでいたモブプロ本(下記)で解説書かれていたり、去年のScrum Fest Osaka 2019のキーノートで知っていたということで指名させてもらいました。

半分スクラムと関係ない問いにも真摯に向き合っていただきました。 理想は、個人ではなく、チームとしての成果が評価される状態、ということに尽きる(例えば、プロダクトの売上が上がったら全員一律昇給)。 極端な例として、及部さんのチームは、チームごと楽天からデンソーに転職した*4けど、採用自体チーム単位での話だったので、評価についてもよりよい状態になったとのこと。 ここは会社に持ち帰って、何かの形で話題提起してみようと思いました。

あとは、チームの外部発信についてもエンカレッジしていただきました。やっていくぞ!

伊藤 宏幸・高橋 勲:特殊部隊SETチームの日常 - 技術と実験を融合した実践アジャイル術 -

https://confengine.com/regional-scrum-gathering-tokyo-2020/proposal/11774/set-

LINEのSoftware Engineer in Testチームの、プロダクト横断チームならではの実践例。

オンボーディングを促進するためのLearning Sessionはうちのチームでもやっていますが、 Learning Sessionにマネジャー的役割の人が入ることで、業務が説明しやすく人事評価にもプラスの影響があった、というのは経験したことなくて、なるほど、という感じでした。

Day 2

Keynote: Lost in Translation: The Manager’s Role in Agile / Michael Sahota

アジャイルスクラムの文脈で、マネージャーはどんな役割を担っていくべきか、という話。 Day 1のCopeさんのKeynoteが理想主義ならば、SahotaさんのKeynoteは徹底して現実主義で、その対比が非常に印象的でした。

組織階層・マネージャー不要論はよく言われるが、いきなり実践するのは危険な罠で失敗につながる*5。 また、自律的で自己組織的なチーム (Autonomous, Self-Organizing Team) も理想とされるが、いきなりは難しいと。

ではどのように個々のチームメンバーを変えていけばよいかというと、そこでいわゆるマネージャーが活躍できる。 マネージャーがマインドセットを変えることで、組織全体が変わる可能性が高まるのだ、と。 ここではXY理論が引用されていた(初めて知った)。

最後に、本題である「アジャイルにおけるマネージャーの役割とは?」の答え。 理想は、マネージャーも何かの形で、価値創造に明示的に関わる役割を持つこと。 具体的には、Product Owner, Scrum Master/Coach, Tech Lead/Architect, Organizational Coach といった役割につく。 しかしそれも一足飛びには難しいので、マネージャー/リーダーのマインドセットの変化から始めるべき。そのためにはトレーニングなどがあると言って結ばれた。

自分にとっては、内容的にも役割的*6にも、「なるほど明日からこういう風にしてみよう!」と思えるものではありませんでした。 しかし色々と考えさせられる部分は多かったし、実際に組織を変えていく過程は、理想の姿にいきなり改革するよりも、少しずつ変わっていくケースも多いんだろうな、とか思いました。

組織変更して部長がいなくなってから起きたこと / 水戸将弥(サイボウズ

speakerdeck.com

弊社マネージャーの水戸さんのお話。内容盛りだくさん。 自分は中の人なので知っている話がほとんどだったけど、組織運営チームはこんなこと考えていたんだ、という気づきもありました。 組織を変えてからプロダクト/チーム間の人の流動性は本当に高まったと思うし、興味持つ方も多いんじゃないかな、と思います。

最高のScrumキメた後にスケールさせようとして混乱した(してる)話 / 藤村新(クラスメソッド)

www.slideshare.net

現場でスクラムをスケールさせて失敗した話。 内容も具体的な現場の話でもちろん面白いけど、それよりも何よりも、プレゼンの魅せ方が本当にすごかったです。 最初から最後までニコニコして聴かせていただきました。

Day 3

Closing Keynote: NEXT→ACTION / 高橋 一貴(株式会社チカク)

RSGT2011の実行委員長・高橋さんのお話。 資料は非公開とのことですが、noteに講演についてのポストがありました。

主な内容は、2010〜2015年頃のヤフージャパンでの活動のお話。 地道かつ大胆に組織を動かしていく話に心を動かされました。 自分がエンジニアを始めたのが2015年、CSMを取ったのが2018年なので、それよりも全然過去の話なわけで、 ヤフーの強さというか先進性も実感しました。

むすび

他にも講演を聞いたり、飲み会で喋ったり、Open Space Technologyに参加したり、色んなことがありましたが、一旦以上にします。

会場を見渡すと、経験豊富なアジャイルコーチがうようよいる中で、スクラムマスターですらない自分がいていいのか?と思いもしましたが、今年一年頑張ってまた来年も参加できたらと思います。

最後になりましたが、運営の皆様、お疲れさまでした!

*1:2019年にも参加したかったけどチケット争奪戦を甘く見ていたため敗退、今年こそはと発売1分で購入してぶじ参加できました。

*2:具体的には、自分/チーム両方のために、発信を増やしていきたい

*3:チーム外の問題へのアタックとか

*4:及部さんのDay 2の講演のテーマ

*5:ティール組織の成功例でも階層はあるし、アジャイル実践においてマネジメントのサポートが無いことがよく問題となる、という調査もある

*6:自分はマネージャーではない